くもり時々はれ


9000HIT! 友達の深上さんへのキリリク「猫音が書きやすい小説」です。
深上さんが作られたウカガのキャラたちを勝手に拝借して好き勝手書かせていただいたものです。
とても可愛いキャラたちなので、よかったら本家サイト様へもいってみてくださいね。



 ケンカなんてモノじゃないのは重々承知で、それでもどこか後ろめたくて、何だか嫌な気分で、何処にも行けず、うろうろする。わかってる。ただ、自分が拗ねているだけなのだと。自分の中でモヤモヤしているだけだと。相手は別にそこまで考えていないのかもしれないし、でも、やっぱり本当に怒っていたのかしれないし。わからない。わからないけど、か、だから、か。今はこうして、唯町をぶらぶら歩いている。
 行く当てもなく、曲がりたいところで曲がって、進みたいところへ進んでいたら、目の前に公園が見えてきた。ちょっと歩き疲れたし、ここで休憩するのもいいかもしれない。そう思って、公園の中へと入って行く。
「だから……なんよ」
「それはねぇ……よ」
「けどさ」
「…………」
「いや、ごめんなさい」
 公園の中では、先客がいるようで、自分がお気に入りの木のベンチとテーブルを陣取られていた。いつも其処で寝るのがお気に入りなので、間合いを取りながら近づく。今日はいい天気だし、案外もうじきどこかへ行くかもしれない。近づきつつも、相手に気付かれないような位置から、様子をそっと伺う。
「………〜♪」
「またその歌?」
「耳から離れないんよ」
 楽しそうな話し声。でも、少し違和感。
 薄緑の帽子とチャイナ服を着た少年……いや青年と、その傍らには……楕円形をしていて目や鼻のあるモノ。確か、ハニワか何かだった気がする。どこをどう見ても、青年とハニワしかそこにはいない。なのに、話し声は二つ。声質が全然違う。…………今日は、此処に来なかったことにして帰ろうかと、考え始める。
「あれ? 誰か来たみたいだよ?」
「あら、初めて見る顔ね」
「そうだね。ねぇ、良かったら座りなよ」
「そうよ。そんなところで隠れていると通報するわよ」
「え! 通報?!」
「何であんたが驚くのよ」
「いや、いきなり通報っていうから」
「何か悪いことしたみたいね」
 どう考えても、もう一人の声はハニワだった。見つかったので仕方なく不思議な二人の前へと出て行き、目の前の椅子にちょこんと座る。
「ところで、ここらの人やないんかな」
「今までこの公園では会わなかったわね」
 今までこの公園はよく利用しているので、時間帯が合わなかっただけなのかもしれない。そんなことを言ったら、あっさりと肯定されてしまった。しかも、わりとどちらでもいい的な感じ。別にそれが嫌じゃないので、いいけれど。
「えっと、俺は日向 (ひゅうが)、こっちは、はにぃ。喋る埴輪」
「:・・・一応、そういう名前で、そういう身分よ」
 ハニワを指差しながら、日向はこちらを見る。ハニワが話すのは、これで確定してしまった。いや、こちらの言葉が伝わる時点で、既に確定しているのだろう。
「二人はこの付近の人?」
 言ってから、「人」というのもおかしいのかなぁと考えたが、大した問題ではないので放置する。
「出身ってこと?」
「まぁ」
「あんたはこの辺りよね」
「うぃ。ここからだと、あと三つばかし向こうになるけどなー。はにぃさんは?」
「私はずっと向こうのほうね」
 日向はこの辺り。ってことは、この公園で見かけたりしていたのだろうか。いや、この組み合わせならすぐにわかるだろう。というと、会う時間帯が違っていたのかもしれない。いつもこの時間、自分なら何をしていただろう……。すぐに浮かんでくるのは、薄茶色で柔らかく、さらさらな髪に柔和な笑顔。頭を軽く振って、その人物を追い出す。
 あいつとはケンカをしているんだ。思い出すと腹が立つから、絶対に思い出さない。あいつが謝るまでは。
「何、急に頭振るの?」
「きっと怪しいことでも考えていたんでしょ?」
「あっあやしいこと」
「なんであんたが動揺するのよ」
「いや、別に」
 うすうす思っていたけれど、なんだかこの二人はとても面白い。ボケと突っ込み。むしろ突っ込み。
「で、あんたはどうしてここにいるの」
「え? 俺?」
「どうして今更私があんたのこと聞くのよ」
「それもそうか」
「まったく」
 やっぱり突っ込みだ。
 それよりも、話からしてどうやら自分に問いかけられているらしい。どうして聞かれても困るのが正直なところ。
「どうして?」
「いつもこの時間なら、あんたはここにいないでしょ? 私たちと会わないんだから。だから、どうして会わないはずの時間に出逢っているのか聞いてるの」
 …………答えられない。頭に浮かぶのは、哀しそうな茶色の瞳。
「まぁ、どうせそんなに大した事じゃないだろうし。いいけど」
 こちらが言う前に話を折られる。別に言わなくていい。言う必要もない。言っても仕方がない。けど。
「……ケンカ、したんだ」
「ケンカ?」
 日向が繰り返したけど、本当にケンカなのか自信がない。
「本当はケンカじゃないのかもしれない」
「なんよそれ」
「何だかわからないけど、こう、モヤモヤして嫌な気分なんだ」
「そんなあやふやな」
「よくわからない。でも、怒っていたし怒られた」
 気がする。と、聞こえないような声で言ってみる。言われた相手はますます困った顔をして、こちらも見ている。初対面の相手にこんなことをいきなり言われても困るか。
「原因は」
「え?」
「原因よ。なんにでも原因はあるやろ?」
 原因は、何だったのだろう? 確か、そう。自分が触れてしまったから。いつも大事そうに飾ってあったものを、興味本位で少し触れてしまった。それが原因で、怒らせて、そしてその言い方にイラついてこっちも怒って家を飛び出したんだ。それは、ほんのささいなこと。こちらが悪いのに、怒った相手が、直後にいたたまれないほどすまなそうな顔をしていた。その顔が嫌で、その瞳が嫌で、其処から逃げ出した。そして今に至るわけで。
「ふうん。だから今の時間にここにいるんや」
「なるほどねぇ」
「で、これから仲直りしに行くんやろ?」
「え?」
「違うんか?」
 当たり前のように、日向から仲直りの言葉が出たので、戸惑ってうまく返事ができない。その様子を不思議がって首を軽くひねる日向。多分ハニワのほうもだと思う。いや、ハニワ改め、はにぃ。
「仲直り……」
「そういうんは、時間がたてばたつほど言いにくいし、早くぱぱっとやるに限るよ?」
「あんたが言うとなんだか、軽いわね」
「軽い?!」
「でもまぁ、日向の言う通り、仲直りは早いことに限るわよ」
「えっ、俺無視?!」
「いちいち五月蝿いわね」
「……わかってたけど、はにぃって性格ひ……」
 そこまで言いかけた日向の顔が突然真っ青になり、固まってしまう。はにぃは上機嫌に鼻歌を歌い、何だかバックに花まで飛ばしている。対照的な二人に、どうしてこんなに空気が凍ったのか少しだけ飲み込めない。飲み込まない方がいいのかもしれないけれど。
「って、あんたもいつまでここにいるのよ」
「え」
「ほらほら。膳は急げ。もう行った方がいいよ」
「でも」
「迷っているうちに、もうずっと言えなくなったら嫌やろ?」
 頷きも返事も返さず、その言葉をかみ締める。実感はないけれど、重く受け止めてしまう。思い出すのは、あれに触れようとした時の相手の表情。そして、その後の哀しそうな目。
 心に思い浮かべてしまうと、何も言わずにベンチから立ち上がる。
「行くんやな」
「その方がいいわね」
「なら、今度は詠も連れて此処へ来るといいー」
「運が良ければまた会えるわよ」
「ありがとう」
 別れの言葉も言わず。それだけ言って公園を出て行く。そこからは、真っ直ぐいつも行く家へと向かった。何度も行って、憶えているというよりは、体が勝手に動いてしまうその道順。勝手に速くなる足の動き。家へと、近づく。
 最初は、唯の偶然だった。
 それがたまに通うようになり、それから毎日其処へ通うようになるのに、時間はかからなかった。其処へいけば、いつも暖かい笑顔で自分を迎えてくれて、柔らかい空気に包まれていた。自分にとってやっと見つけた場所だった。だから、なのかもしれない。昨日自分の場所を否定された気になった。だから、怒って、拗ねてた。
やっと自分の気持ちに気付く。
拗ねていたのは、怒られたからじゃなくて、もちろんそれもあるけど、その怒りが拒絶に思えたから。自分には踏み込めない場所があるのだと、壁があるのだと、認識させられたから。
 壁。自分と相手の、距離。
 その壁を乗り越えようとは思わない。唯、傍に居させてくれればそれでいい。それが、自分と相手の距離なのだと、思う。そうしないと、また、相手にあんな哀しそうな目をさせることになってしまう。それは、嫌だと、思った。
 曲がり角を曲がって見えてきた小さな家。暖かい雰囲気に包まれたその家に近づき、いつものようにひょいと窓枠に飛び乗った。
 窓から見える、机とクローゼットにベッド。それに、椅子に座って渋い顔をしているあいつ。話を書くことに詰まっているのだろうか。それとも?
 しばらく見ていると不意に相手がこちらを見て、驚いた顔をする。慌てるようにこちらへ近寄る。
「…………来て、くれたんだ」
 ほっとしたように微笑んで、その顔を見ると、胸が詰まる。
「今日はもう来てくれないかと思った」
 ふいに日向たちの言葉が思い出される。早い方がいい、と。確かにそうだったのかもしれない。そういえば、日向はどうして相手の名前を知っていたのだろう。……まぁ、いいか。
「昨日はごめんね」
 こっちが言う前に謝られてしまい、何だか照れくさい。でも、ここで言わないのもはにぃに怒られる。何より、そんなもやもやしたままの自分が嫌だ。詠とは、まだしばらく一緒にいたい。


「にゃぁ」

END






〜後書き〜

キリ番報告ありがとう〜!!
を、祝しまして。オフラインでも仲良くしてもらっている深上さんからのリクエスト。
「猫音の書きやすい小説で」を、書かせていただきました。
いやはや。それって、お題なのだろうか・・・と考えつつも好き勝手させていただいた作品。
深上さんが作られた伺キャラを勝手使用させていただき、唐突に献上しました!
こちらにさらしてもよいとの許可をいただき、こうしてアップする運びとなりました。
非常に書きやすい子たちでした。前半一組との会話の掛け合いとかね。
内容的には、各キャラを壊さずに書けたかなと。それが危惧。
拙い作品でも、もし喜んでいただけたなら至極光栄。
ありがとうです。また、よかったら遊びに来たりきり番踏んだりしてくださいな〜。

2008年4月6日アップ




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